2012年6月、そんなコンセプトのもと、渋谷区神山町にフレッシュチーズをメインとしたCHEESE STANDをオープンしました。
当時は街には出来たてのチーズを買えるような場所はなく、売っているチーズは何日もかけて産地から輸送され、長持ちさせるために保存料が使われているようなものでした。また、チーズという存在がパーティーなどのラグジュアリーなシーンに出てくるイメージもあり、どこか肩肘張ったものと思われていました。
CHEESE STANDは、そうしたイメージを変え、フレッシュチーズを日常のものにしていこうという思いからスタートしたブランドです。それから10年が経ち、これまで挑戦してきたさまざまな取り組みについて深く考える中で、自分たちの中にはチーズづくりを通して伝えたい大切なメッセージが眠っていることに気付きました。
このページでは、創業から10周年を機に考えた、CHEESE STANDというブランドが持つ思想についてご紹介できればと思います。
2022
インターネットが普及した時代において、食は「より便利に」「より美味しく」を求めて進化を続けています。そんな時代の中で、機能性や味覚的な「おいしさ」を超えて、食べることで体だけではなく心も豊かになる食との関わり方を追求していきたいと思います。
食は、人々にとって日常であるが故に「食とどのような関係を結ぶか」というテーマを意識することは多くないかもしれません。しかし、日常であるからこそ、食との関係は、その人の生き方を表わすものであると私たちは考えます。
そのような「よりよい人と食の関係」を、「Thoughtful Food」と呼ぶことにしました。「Thoughtful」とは、思慮深い、思いやりのある、といった意味を持つ言葉です。妥協のない「いいもの」をつくることを探求する職人たちと、そうしたものを通して作り手の「こだわり」を受け取る人たち、どちらも極端にならない、バランスのいい関係を考え続けていきます。
チーズとは、素材のようでもあり、一品の素朴な料理のようでもある。そんな懐の広いプリミティブな存在であるチーズを通して、私たちの思いを広く社会に届けていきたいと思います。
食は、人が生きている限り向き合い続ける、かつ他者との関係性を抜きには語れない社会性をまとった行為であると考えます。そうした前提のもと、「人と食の関係」のための10の原則を宣言するマニュフェストを掲げます。
以下の10項目を、より高い水準で実現させること、そして生産する側も消費する側もこれらに責任を持ってもらうことを目指します。
「美味しい」という食の基本への目線を忘れずに、それを探求し続けること。
ひとつひとつのプロダクトや行動に、ひとりひとりの美学(生き様)が感じられること。
作り手、受け手、そしてすべてのステークホルダーの気持ちを想像し、誠実かつ真摯に向き合うこと。
愛と情熱が注がれた人生の投影であり、自己表現である。そう信じられるプロダクトを生み出し、取り扱うこと。
より良いものをつくるために変わることを恐れず、億劫にならず、自らに限界を設けず、挑戦し続けること。(物事を変えるには、長い時間と大きな労力を伴う)
プロとしての、オリジナルな思考と高い水準に責任感をもち、細部に至るまで妥協がないこと。
先人が築いた食文化の伝統を継承し、それに敬意を払いながら、新たな価値へと進化させること。
「本当に良いものとは何か」を常に問い、流行にとらわれない普遍性を見つめ続けること。
社会の一員として、働き方やビジネスモデルや製造過程を含めてサステナブルであること。過度な成長を追わず、適量生産・適量消費を心がけること。
取引先、仕入れ先、買い手という関係を超えて、大切にすべき価値観を共有できるコミュニティを育み、社会に貢献すること。